タンデム自転車は違反?
日本国内には、タンデム自転車に2名以上で乗車すると違反となる地域があります。
タンデム自転車とは、2名以上で乗車するために、複数のハンドル、サドル、ペダルを備えた自転車です。
複数人乗車のために作られた自転車であっても、自転車の乗車人員を原則1名とする各地の公安委員会規則において、タンデム自転車は制限を受けています。
道路交通法はどうなっているか
道路交通の基本となるのは道路交通法です。 道路交通法において、自転車の乗車人員はどのように定められているでしょうか。
第55条(乗車又は積載の方法)においては、タンデム自転車は乗車のために設備された場所に乗車する限り、違反ではありません。
自転車の荷台などに乗車する、いわゆる二人乗りは、55条違反です。
第57条(乗車又は積載の制限等) 2において、各地の公安委員会が軽車両[1]の乗車人員の制限を定めても良いことになっています。
タンデム自転車を公道で乗ってよいかどうかは、各地の公安委員会の定めた規則次第です。
道路交通法 第11節 乗車 積載及び牽引 より引用、
(乗車又は積載の方法)
第55条 車両の運転者は、当該車両の乗車のために設備された場所以外の場所に乗車させ、又は乗車若しくは積載のために設備された場所以外の場所に積載して車両を運転してはならない。 ...略...
第56条 ...略...
(乗車又は積載の制限等)
第57条 車両(軽車両を除く。以下この項及び第58条の2から第58条の5までにおいて同じ。)の運転者は、当該車両について政令で定める乗車人員又は積載物の重量、大きさ若しくは積載の方法(以下この条において「積載重量等」という。)の制限を超えて乗車をさせ、又は積載をして車両を運転してはならない。 ...略...
2 公安委員会は、道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要があると認めるときは、軽車両の乗車人員又は積載重量等の制限について定めることができる。 ...略...
公安委員会規則はどうなっているか
それぞれの都道府県における自転車の複数人乗車の制限の状況は、別ページの「タンデム車の許可状況」を参照してください。
日本各地のすべての公安委員会規則において、自転車の乗車人員は、「原則的に一名」とされています。 乗車装置の数にかかわらず(と明言はしていませんが)、一人でしか乗れません[2]。
ただし、下記の条件で乗車装置の数に応じた乗車を許可している場合がしばしばあります。
- 3輪または4輪の自転車であれば、
- 運送業務であれば、
- 自転車専用道や地域を限定して、
3輪または4輪で許可されていても、一般のタンデム自転車は2輪ですので乗車できません。 運送業務において許可されても、個人的に乗ることができません。 3輪または4輪、運送業務において許可というのは、かつて輪タク業者に配慮したもののようです。
各地で運用が始まったベロタクシーは、3輪自転車、あるいは、運送業務という名目で、複数人の乗車が許可されています。
自転車専用道というのは、自転車以外の通行を禁止(歩行者も通行禁止)した、独立した道路のことです。 厳密な意味での自転車専用道というのは、日本においては幻の存在です。
タンデム自転車は違法ではありません
ときどき勘違いしている人がいるのですが、タンデム自転車自体は違法車両ではありません。 公道走行を認められている、れっきとした自転車です。
違反とされているのは、定員乗車を認められていない地域で定員乗車する行為です。
タンデム自転車に乗ってよいところ
タンデム自転車に定員乗車できる場所はどこでしょうか。
- 自転車専用道
- 事実上存在しないに等しい場所です。存在したとしても、どうやってそこまでいけばよいのでしょうか。
- 公安委員会が規制に関わっていない道路
- 河川敷の管理道路などがこれに相当します。私道や公園内の道路も含まれます。
- 山形県
- タンデム自転車に定員乗車できます。
- 長野県、兵庫県
- ただし、二人乗りのタンデムまでです。トリプレット(三人乗り)以上のタンデムは定員乗車できません。
- 日本国外
- 先進国と呼ばれる国では日本でだけ、タンデムの運用が規制されています。タンデムに規制のあるという国は地球上には日本だけのようです。
ほかにも、「指定した地域」、「指定した道路」で認める都道府県もあります。 タンデム自転車がレンタルされている場所は、以上のどれかに該当しているはずです。
規制は妥当なものか
公安委員会規則において2輪のタンデム自転車の運用が制限されていることがわかりました。 これは妥当な規制なのでしょうか。
公安委員会が軽車両の乗車人員について定めている根拠である、道路交通法57条の2をもう一度読んでみます。
公安委員会は、道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要があると認めるときは、軽車両の乗車人員又は積載重量等の制限について定めることができる。
制限を定めているのだから、それを必要とする根拠があるはずです。
全国の警察に、「必要があると認めた根拠」を問い合わたところ、「根拠不明」あるいは「道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため」という答が帰ってきました。
「では、タンデム自転車の安全性について検討したことはあるか」との問いには、一様に「無い」との答でした。
「安全のため必要だと認めるので禁止している。禁止されているのだから安全ではない。」
欠陥のある規則では、現場の警察官がかわいそうです。 論理的に反論されたとしても、規則の妥当性を判断できる立場にないからです。 彼らは取り締まるか、うやむやにするしかないのですから。
- [1] 軽車両
- 馬車や人力車など、原動機で自走しない乗り物の総称; 自転車は軽車両に含まれる
- [2] 自転車の乗車人員は原則的に一名
- 幼児との同乗は例外として定められています。全国的に許可されているのは幼児用座席に一名までです(2009/6現在)。一部地域では、背負った場合を含めて幼児二名同乗を許可しています。
- ちなみに、「背負って同乗」は道路交通法55条違反です。乗車人員については57条2によって公安委員会が制限を設けることができます。しかし、乗車の方法(55条)については、規則制定を委譲する条文が存在しません。「背負って同乗」を認めたかったら、55条を改定する必要があるはずです。
- 文書更新日
- 2009-06-20
- 文書最終更新日
- 2001-01-18